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消化性潰瘍のくすり(1)
―消化性潰瘍を知る―

 薬『一月行く、二月逃げる』と言われるように受験や就職、新年度に向けての準備にあわただしく、風邪や花粉症の流行もあり、つい暴飲・暴食し胃腸の調子が狂いやすい季節です。

 一般市販薬も含め、一番消費されているのが胃薬です。
最近は、医療用医薬品から、一般市販薬へ移行される「スウィッチOTC」が増えています。こういった薬の中には、必ず薬剤師が詳しい説明をし、パンフレットをお渡しする事を義務付けられた製品もあります。例えば、ガスター10(テン)は副作用に充分注意しなければいけない薬の一つです。信頼できる薬剤師にご相談ください。

消化性潰瘍の病気

消化管のうち胃液と接触する領域に発生する潰瘍を消化性潰瘍といいます。胃酸が関与する病気は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・吻合部潰瘍・逆流性食道炎・Zolliger-Ellison症候群があります。
消化性潰瘍は、『胃潰瘍(GU)』と『十二指腸潰瘍(DU)』に代表されます。

 
好発年齢
性比(男:女)
胃潰瘍(GU)
40~50
2:1
十二指腸潰瘍(DU)
20~40
3.5:1

自覚症状は、心窩部痛・空腹時痛・悪心・食後痛・下血・食思不振などです。
夜間に増悪する傾向があるので、寝る前の暴飲・アルコール・タバコ等は、やめましょう。

消化性潰瘍の原因

胃や十二指腸潰瘍の原因
過労(睡眠不足) 不規則な食生活
精神的ストレス(特にイライラ) 性格(まじめ、几帳面、勤勉)
けが、やけど 手術
体質(アレルギー、遺伝など) 栄養不良
慢性の病気(脳、肺、肝臓、すい臓など) 胃炎
薬物(解熱・消炎鎮痛剤、血圧を下げる薬、副腎皮質ステロイド薬など)
食事(刺激の強い香辛料、熱すぎたり冷たすぎる飲食物)
大量の飲酒 喫煙

攻撃因子と粘膜防御因子の不均衡によって発生する説が広く支持されていました。

攻撃因子:胃酸とペプシン分泌・ガストリンなどの消化管ホルモン・消化管運動など
防御因子:粘液及び重炭素イオン分泌・粘膜微小循環細胞回転・プロスタグランジンなど

ストレスの関与する潰瘍では、粘膜下層の細動静脈血管が血流分布異常を起こし、自律神経緊張によって血管痙攣から粘膜の虚血やうっ血をおこし血管透過性亢進と血管を損傷し、さらに浮腫をおこして、粘膜障害をおこします。

ヘリコバクタ-・ピロリ菌と潰瘍の関係

最近は消化性潰瘍にヘリコバクタ-・ピロリ菌が密接に関与していることがわかってきました。ヘリコバクタ-・ピロリがそのウレアーゼで尿素を分解して産生したアンモニアは胃酸を中和し、H.ピロリが存在しやすい環境を作ります。慢性胃炎は、粘膜萎縮が胃全体に広がっていますので壁細胞の数が減少し胃酸分泌が低下します。更にH.ピロリ菌は増殖しやすくなります。そのため、慢性潰瘍と深く関与しています。

==DRUG CAFE== 

十二指腸潰瘍(DU)では、基礎分泌(BAO)も刺激分泌(MAO)各高い状態で、BAOが優位に高い特徴がある。
攻撃因子の酸分泌亢進の機序は、G細胞へのフィードバック機構の破綻・刺激に対する細胞の感受性亢進・迷走神経を介したG感受性亢進やセクレチン分泌障害とソマトスタチン分泌細胞減少がいわれている。

消化性潰瘍治療薬

大きく分けると、治療薬には、防御因子増強するもの・攻撃因子を抑制するものがあります。

≪ 防御因子増強薬 ≫
粘膜を守る方法は5つあります。

  1. 病巣の保護(EX スクラルファートRアルサルミン)
    潰瘍になっている部分に薬がくっついてベールで包み強酸の胃液等の刺激から守ります。
  2. 組織修復の促進(EX アルジオキサRアスコンプ・イサロン)
    潰瘍部分が肉芽を作るのを促進することで組織の治りを早めるものです。 
  3. 粘膜分泌の促進(EX テプレノンRセルベックス)
    粘膜表面を潤している粘液は、糖タンパク・ムコタンパクで出来ていて、重炭酸イオンバリアと保護疎水皮膜バリアとして防御作用があります。粘液分泌をさかんにして、防御作用を強くします。
  4. 粘膜の微小循環の改善(EX 塩酸セトラキサートRノイエル)
    酸素やエネルギーは血液によって補われます。血液循環を改善して粘膜を強くします。
  5. プロスタグランジンの増加(EX オルノプロスチルRロノック・アロカ)
    プロスタグランジンは、胃粘膜にダメージを与えるような物質、強酸・強アルカリ・エタノール・熱湯などから下記の作用によって細胞を保護し、結果粘膜を保護します。

  ≪プロスタグランジンの粘膜への作用≫

ア) 粘液分泌増加 (消化管を強酸から守る)
イ) 粘液血流増加 (酸素供給をする)
ウ) アルカリ分泌増加 (強酸を中和して刺激を抑える)
エ) 細胞増殖作用刺激  

鎮痛薬で胃腸障害を起こしやすいのは、胃粘膜で作られるプロスタグランジン生成の妨害に関与していると判ってきました。
プロスタグランジンを投与することで粘膜保護をします。

 ≪ 攻撃因子抑制剤 

急性期には特に酸による刺激による悪化に気をつけなければなりません。酸(胃酸等)の分泌を抑えることがもっとも効果的です。
胃酸分泌を促進する物質は、ガストリン・ヒスタミン・アセチルコリンの3つがあります。胃酸分泌を抑制する物質は、D細胞から分泌されるソマトスタチンがあります。これらの物質を受容体が受け取ると刺激となってさまざまな作用を起こします。

  1. 抗コリン作用(Rコランチル等)
    アセチルコリン受容体は副交感神経によって支配されています。この副交感神経の働きを抑える作用を抗コリン作用と言います。
    ヒスタミン受容体は、アレルギー症状などの炎症に関与するH1受容体と胃液分泌に関与するH2受容体等が判っています。
    酸分泌抑制作用はあまり強くないので鎮痙剤(痙攣を抑える)として使われています。
  2. ムスカリン受容体拮抗作用(塩酸ピレンゼピンRガストロゼピン等)
    アセチルコリン受容体(ムスカリン受容体とも言います)とアセチルコリンが結びついて酸分泌するのですが、アセチルコリンとよく似た構造をしている物質はムスカリン受容体と結びついてアセチルコリンがつくのを防ぎ(拮抗し)ます。高齢者に用いられることが多い薬です。
  3. 抗ガストリン作用(ウロガストロンRウガロン/セクレチンRセクレパン等)
     ガストリン受容体の作用を抑える薬です。H2受容体拮抗作用やプロトンポンプ阻害作用の薬よりは、酸分泌抑制作用は弱いです。
  4. H2受容体拮抗作用(ファモチヂンRガスター/塩酸ラニチジンRザンタック/シメチジンRタガメット等)
    胃壁にあるH2受容体が反応すると胃酸だけが分泌されます。このH2受容体を働かないようにして胃酸分泌を抑えます。
    特にシメチジンは外科手術なく治療できるようになり、ノーベル医学賞が授与されたほどの画期的な薬ですが、併用薬との相互作用で肝臓障害で死亡例が出るなど重篤な副作用も出ていて、使用に注意が必要な薬です。
    高齢者には、代謝や排泄が遅れて蓄積し、作用が強く現れることがあります。防御因子増強薬の使用が適していますが、H2受容体拮抗薬を使用時は減量して使用する必要があります。
  5. プロトンポンプ阻害作用(オメプラゾールRオメプラ-ル・オメプラゾン/ランソプラゾールRタケプロン/ラベプラゾールRパリエット等)
    酸分泌に関連する受容体は最終的にはプロトンポンプという部分を経由して酸分泌を行うことがわかってきました。そこでプロトンポンプの働きを抑えることによって強力に胃酸分泌が抑えられるようになりました。
    副作用と効果の兼ね合いから、使用期間は6~8週間と規制されています。上部消化管出血や胃炎や麻酔前投薬には使えません。
    ゾリンジャー・エリソン症候群・逆流性食道炎・吻合部潰瘍には使えます。 
 
一般名
商品名
作用機序
主な副作用
備考


ヒドロタルシト サモールN 抗ペプシン作用と制酸作用による胃酸中和 下痢・軟便・口渇・食欲不振 大量の牛乳と服用すると高カルシウム血症をきたす
ナシッド
合成ケイ酸アルミニウム アルミワイス 中和する際のケイ酸が胃粘膜保護 便秘 アルミニウム骨症注意
シリカミン
ノルモザン
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム スピーゲル 中和作用と粘膜保護 下痢・嘔吐・便秘・口渇・代謝異常 制酸剤でガスのたまる人に有効
乾燥水酸化アルミニウムゲル アルミゲル 中和時ゲル状生成。長時間中和・潰瘍部分保護 便秘・悪心・嘔吐・骨軟化症 便秘時は緩下剤を使用・透析患者には禁忌
ヒドロゲル
ホエミゲル
酸化マグネシウム 酸化マグネシウム 中和時塩化マグネシウム生成・便秘・尿路結石予防 下痢・高マグネシウム血症 制酸剤:0.5~1g/日
尿路結石予防0.2~0.6g/日
水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム配合 マーロックス 強い制酸作用成分の副作用のバランスを取っている 食欲不振・胃部不快感 併用薬の吸収を阻害することがあるので服用時間をずらすとよい
H2





シメチジン タガメット H2受容体をブロックして胃酸分泌抑制 頭痛・めまい・倦怠感・悪心・便秘・下痢・発疹・女性化乳房・間欠性腎炎・皮膚粘膜眼症候群・再生不良性貧血 併用薬との相互作用が多い
カイロック
塩酸ラニチジン ザンタック シメチジンの約8倍の効果
ファモチジン ガスター シメチジンの約30倍の効果持続時間も長い(水無しで飲める口腔内崩壊錠もある)
塩酸ロキサチジンアセタート アルタット 粘膜保護作用あり。シメチジンの約6倍。徐放製剤・肝薬物代謝酵素に影響及ぼさない
ニザチジン アシノン 速やかな吸収で早期自覚症状改善
ラフチジン ストガ- 逆流性食道炎・胃炎にも効果
プロテカジン
プロトン
ポンプ阻害薬
オメプラゾール オメプラール プロトンポンプに働き、日中夜間問わず酸分泌確実にもっとも強く抑制 過敏症・肝障害・下痢・便秘・頭痛・発熱 持続性・腸溶剤/使用期間限定(十二指腸潰瘍6ヵ月・その他8ヵ月)
オメプラゾン
ランソプラゾール タケプロン
ラベプラゾールナトリウム パリエット
ムスカリン受容体拮抗薬 塩酸ピレンゼピン ガストロゼピン H2受容体より胃酸分泌抑制は弱い 口渇・便秘・悪心・下痢・歯肉炎・排尿困難 高齢者に適しているが前立腺肥大の人には注意

ガス
トリン
プログルミド プロミド ガストリン分泌抑制・胃粘膜保護作用 便秘・口渇・悪心・下痢・食欲不振・顔面紅潮 コーティングされているので粉砕できない
セクレチン セクレバン ガストリン分泌抑制・粘液分泌促進作用 下痢・便秘・腫瘍・GOT・GPT上昇・アミラーゼ値上昇 安全のためブリックテスト必要・止血作用も有す
ウロガストロン ウガロン ガストリン分泌抑制・組織修復促進作用 口渇・胃部不快感・下痢・便秘 高齢者には減量して用いる
ホモガロール
プロ
スタ
グラ
ンジン
製剤
オルノプロスチル ロノック 防御機能全体を高め、攻撃因子抑制もする 下痢・腹部膨満感・心悸亢進・頭痛・GOT/GPT上昇 出血性潰瘍のある人は注意
アロカ
ミソプロストール サイトテック
エンプロスチル カムリード
レバミピド ムコスタ

一般名
商品名
その他・備考
潰瘍病巣部位保護 スクラルファート アルサルミン 抗ペプシン・ニューキノロン系抗生剤との併用注意
アズレンスルホン酸ナトリウム アズレン  
マーズレンS 抗炎症・粘液分泌促進
ポラプレジンク プロマック 亜鉛含有
アルギン酸ナトリウム アルロイドG 液状・冷蔵庫で冷やすと飲みやすくなる
アセグルタミドアルミニウム グルマール 抗ペプシン・ニューキノロン系抗生剤との併用注意
エカベトナトリウム ガストローム 抗ペプシン
チアミン・コバルト・クロロフィリン錯化物 ミドリアミン PG増加
組織修復(肉芽形成促進) アルジオキサ アスコンプ テトラサイクリン系抗生物質の吸収阻害
イサロン
アランタ
ゲファルナート ゲファニール 注射薬あり(冷所で白濁が振ったり軽く暖めるとよい)
オステオール
サラニール
アズレンスルホン酸ナトリウム ノズレン 抗炎症
アズノール 抗炎症 
粘液分泌促進 L-グルタミン グルミン 肉芽形成促進
テプレノン セルベックス PG増加
ブラウノトール ケルナック PG増加
粘膜微小循環改善 塩酸セトラキサート ノイエル 抗プラスミン作用あり血栓症患者は注意
ソファルコン ソロン 遮光保存
スルピリド ドグマチール・アビリット 抗うつとして使用するときは量が倍以上になる
トロキシピド アプレース 生理不順に注意・PG増加
塩酸ベネキサートベータデクス ウルグート 抗プラスミン作用あり血栓症患者は注意
ロンミール
  メチルメチオニンスルホニウムクロライド・ノイシリン他 キャベジンU 甲状腺機能低下症・副甲状腺機能亢進症患者には注意
胃粘膜強化 マレイン酸イルソグラジン ガスロンN 作用時間が長い

その他の治療上の注意点

ストレスが潰瘍と関連深いことから、維持療法期(ある程度回復してきて、再発を抑えたい時期)に使用されます。胃壁をいくら治しても、ストレスから胃酸分泌を増やし、胃壁の免疫(抵抗力)を落としてしまった状態では、すぐ再発してしまうからです。
痛みがなくなったからといって、薬を飲むのをやめると、再発しやす くなります。 中止は避けましょう。主治医のきちっとした診断に従って、服薬期間(服薬中止する時期)は決定しましょう。特にH2受容体拮抗薬の中止は、減量しながら、防御因子増強薬を併用していくことが基本です。

ヘリコバクタ-・ピロリ菌の除去法

古典的3剤療法(ビスマス製剤+抗原虫薬+抗菌薬)が使用されていましたが、平成12年10月末に厚生省保険局及び日本消化器学会で新3剤療法が確立され、保険適応になりました。
新3剤療法:
PPI(30mg)+アモキシシリン(力価750mg)+クラリスロマイシン(力価200mg)を同時に7日間投与
検査によって同定されなければ、この療法は使えません。また、PPIを服用しているとH.ピロリ菌が検査では見つけられないことがあります。
参考
Italian regimen:プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor:PPI)+クラリスロマイシン;チニダゾール
MACH1 study:アモキシシリン・クラリスロマイシン・メトロニダゾールの2剤+PPI)
ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取り扱いについて (保険発第180号 PDF文書)
検査料の点数の取り扱いについて(保険発第181号 PDF文書)

一般的注意

  1. 過労や神経を刺激すること、ストレスを避け、充分な休養と睡眠をとりましょう
  2. 食事は規則正しく、自分の生活リズムに合わせて決められた時間に、落ち着いた気分でゆっくりと、よくかみましょう
  3. 食事はバランスを考えて、栄養・カロリー・ビタミン、ミネラル類を十分取りましょう
  4. 潰瘍は症状(痛み・むかつき・膨満感等)が消えても再発しやすいので、自分勝手に服薬を止めてはいけません。必ず、医師・薬剤師にご相談ください。
  5. 潰瘍は再発しやすい病気です。日頃からの注意が必要です
  6. 満腹と空腹はさけましょう
  7. 感冒薬や消炎鎮痛剤の飲みすぎまたは連用はやめましょう。
  8. 刺激の強いものはさけましょう
    ・ 機械的に胃の運動を強めたり、粘膜を傷付けやすい物
       (硬い繊維を含むもの)
    ・ 化学的に胃液分泌を刺激するもの
       (コーヒーや紅茶/香辛料/酢の物/塩辛いもの/燻製品など)
    ・ 温熱的に胃粘膜を刺激するもの
       (熱いもの/冷たいもの) 
    ・ 胃を拡張するもの
    (過食・炭酸飲料)
  9. 嗜好品を取り過ぎないようにしましょう
      アルコール飲料・喫煙など

ムリ!ムリ!と声が聞こえそう。
人間のエネルギーの元は食べ物から吸収する栄養にあります。
その栄養を吸収する器官「胃・腸」が故障していたら・・・
感染症や免疫を必要とするすべての病気への抵抗が出来なくて病気にかかりやすくなります。
また放っておくと潰瘍がひどくなると出血し、癌になることもあります。
胃・腸を労わってやりましょう。


参考

北里大学医学部 http://bme.ahs.kitasato-u.ac.jp/
処方がわかる医療薬理学  中原 保裕著 学研
薬のサイエンス vol3 フジメディカル出版 11月号 消化性潰瘍について
  http://www.hosp.med.keio.ac.jp/yakuzai/4-QA/199711.htm
服薬指導マニュアル http://home3.highway.ne.jp/nitop/yk/huku03.htm
知って得する病気の知識 http://www.med.or.jp/chishiki/i/002.html


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