<薬を包装している目的>
薬はいろいろな目的でさまざまな工夫で包装されています。
- 外気・熱・寒冷・湿気など外部環境からの薬の保護
- 薬の効能の維持
- 清潔感
- 開封や携帯の利便
- 製品管理の容易さ
など
【 PTPシート 】
最近の包装技術は進歩していて、よく使われているのがPTP包装です。
PTPとは、Press through packの略で、錠剤やカプセル剤を包んでいるアルミ箔です。
最近は一錠づつちぎれるように、ミシン目が入っていましたが、間違ってPTP毎誤飲されるケースがあり、ミシン目がなくなっています。それでも、一錠づつ飲むときは、はさみで切り離してお渡しする場合もあります。服用するときは、このPTPシートの裏側から押し出して、錠剤またはカプセルを出して飲んでいただきます。
【 一包化 】
一包化あるいは分包と言って、一袋に一回分ずつ、服用する薬を小分けしてお渡しすることがあります。
服用していただくときは、この袋(薬包紙)から出して飲んでいただきます。
ところが,このPTPシートや薬包紙から出さずに、シートあるいは薬包紙ごと飲み込んでしまわれる方があります。笑い話のようですが、食道異物の27%がPTP異物であったという報告があります。
他のことを考えていたとか誤飲にまったく気づいていない場合に起こっています。ご注意ください。
【 カプセルの飲み方 】
* 水はたっぷり目に飲みましょう。
「水なしに飲める」と自慢される方があります。カプセル剤はゼラチンを固めて筒状にしたものです。
錠剤に比べ、食道粘膜や胃粘膜への吸着性が高いため、カプセルがとどまったまま壊れ、薬の有効成分がいっきにとけだすと、粘膜などの組織が破壊され、潰瘍が起こると考えられます。潰瘍は深く、多発的です。
- 十分な水(コップ半分程度)とともに、薬を飲む。
心臓疾患・膵臓疾患のある方など水分量を制限されている方は医師にご相談ください。
- 横になって薬を飲まない。
- 寝たきりの人では、体を起こして飲ませ、しばらくそのままの姿勢を保つ。
- のどにものをつまらせやすい人や高齢者はとくに注意が必要。
* カプセルの中身は出さずに飲みましょう。
カプセル剤がカプセルに入っている目的は
- 味やにおいが悪いのを防ぐ。
- 有効性や安全性を保つため。(溶け出す場所・時間を調節する等)
- 投与量が少ないための計量の誤差を防ぐ。
- 高齢者やこどもなど飲み方に工夫がいる場合。
などです。
無意味にカプセルになっているのではありません。
もし、カプセル剤が飲みにくいようであれば、同じ成分・薬効の散剤や錠剤に変えることも可能な場合があります。遠慮せずに医師・薬剤師にご相談ください。
ゼラチンアレルギーのある方は、先にお申し出ください。
【 錠剤の飲み方 】
錠剤が大きかったりすると、割ったり、砕いたり、すり潰して服用してしまいがちです。
徐放剤(徐々に溶けていく薬)・腸溶剤(腸の中で溶ける薬)・苦味や酸味が強い薬などは、コーティングされたり、何層かになっていたり等工夫がされています。
オメプラゾールのように薬理作用が失われることもあります。逆に徐放性降圧剤のように極端に血圧が下がってしまう、脈が遅くなるなどの副作用が出る恐れもあります。
飲みにくい場合は、薬剤師にご相談ください。剤形を変える・薬を変えるなどご相談に乗ります。
薬の種類と服用の注意点
種類
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薬品例
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注意点
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糖衣錠 |
アデホス腸溶錠など |
噛み砕いてはいけない。
コップ一杯程度の水、または白湯と一緒に飲む |
フィルムコート錠 |
腸溶錠 |
舌下錠 |
ニトログリセリン錠など |
飲み込まず舌の下に入れて溶かす |
付着錠 |
アフタッチ錠など |
口内炎症部位に付着させる |
チュアブル錠 |
エリスロシンチュアブルSなど |
噛み砕いて口内で溶かして飲み込む |
トローチ |
SPトローチ明治など |
飲み込まないでなめる。使用直後にうがいや食事をしない。 |
膣錠 |
エンペシド膣錠など |
飲まないこと。膣内に挿入する。 |
カプセル剤 |
インテバンSPなど |
多めの水または白湯で飲むこと。カプセルから中身を取り出したり、噛んだりつぶしたりしないこと。湿気・温度に注意する。 |
外用カプセル剤 |
リノコートなど |
飲み込まないこと。器具で患部に噴霧する。 |
振とう合剤 |
マーロックス |
よく振って飲む。冷凍しない。 |
懸濁シロップ |
ポンタールシロップなど |
よく振って一回分の量を正しく飲む。保存温度に注意する。 |
ドライ |
抗生物質など |
そのまま飲むか、一回分ずつ適量の水に溶かして飲む。牛乳やミルクには混ぜない。 |
シロップ |
【 吸入器の使い方 】
気管支喘息に用いられる吸入器(ハンドネブライザー)を使用している方で十分な効果が出ないといわれる方があります。薬が症状にあっていない場合もありますが吸入器の使い方が不適切な場合が、しばしばあります。
吸入方法
- 初めに息を軽く吐きます。
- 口を大きく開け、いっきに息を吸います。
- 少し息を止めます。
- 口をゆすいで、口の中や喉に落ちた不必要な薬剤を吐き出します。
○噴射時の口元と吸入器の距離
- 成人の場合
口元から指2本(4cmくらい)離した状態を保って噴射します。
*大きな液状粒子は空中に落下し、口の中や喉(咽頭)に落ちて粘膜を刺激することが避けられる。
*小さい粒子だけが効率よく気管支粘膜に沈着します。
*吸入が難しい場合は、補助器具を使うことで正しく使うことが容易になります。
- こどもや高齢者の場合
大きく口を開けハンドネブライザーの吸入口をくわえた状態で噴射します。
* 口から離して噴射すると、手がぶれて必ずしも正確に吸入できないことがあります。
* 最近は使いやすく改良されたものも出ています。薬剤師にご相談ください。
【 坐薬が途中で出てしまったら 】
坐薬の吸収が完了する時間は、有効成分によって格差があります。
ペニシリン系抗菌剤<アンピシリン>ヘルペンは50分ですが、胃の運動調節剤<ドンペリドン>ナウゼリンは約8時間かかります。全部吸収されなければならない薬もあれば、一部でもよい場合もあります。
肛門内への挿入が不完全な場合、挿入の刺激で排便すると有効な治療が期待できません。逆に新しく挿入すると薬が効きすぎて副作用が現れる恐れがあります。
50%吸収に達する時間や累積吸収50%到達時間はどのくらい肛門内へ入れておけばいいのかの目安になります。
こうした研究は人での臨床試験が行われていないので残念ながら、具体的に説明するデータはまだありません。
しかし、一般的な対処法を説明することはできます。少なくとも5分は排出しないように、挿入後ティッシュなどで軽く押さえてください。
もし途中で体外に出てしまった時の対処法は、薬をもらう時に薬剤師にご相談ください。
【 点眼剤の使い方 】 目薬です
〔成人の場合〕
- 手を石鹸でよく洗ってください
- 下まぶたを軽く引き、1~2滴を確実に点眼します。
2~3滴の場合もありますので、医師または薬剤師の指示に従ってください。
このとき、容器の先がまぶたやまつげに触れないように注意しましよう。
- 点眼後は静かにまぶたを閉じて、まばたきをしないで約1~5分間、目をつぶっていてください。
点眼後に軽く目頭を押さえるのも効果的です。
- あふれた点眼液は清潔なガーゼやティッシュで拭き取ってください。
注:
*緑内障の薬の場合はとくに点眼後目頭を抑えるのは大切なことです。
目頭と鼻筋の間の涙のうを抑えることで、薬剤が全身に行くのを防ぎ全身性の副作用を抑えます。
*2種以上の目薬を使う場合は、少なくとも5分以上次の点眼まであけてください。
点眼剤同士が混ざって相互作用を起こし、副作用を起こすことがあります。
*必要以上の量を点眼しないでください。
眼の表面を覆う量(普通1滴です)以上は、鼻を通って口に入ります。「目薬が苦い」と感じたら、目薬の差しすぎです。目薬をさして、副作用が全身症状として出ることがあります。量は守ってください。
どうしても目薬が使いにくい方は、点眼補助器具があります。
【 軟膏・クリーム等の使い方 】
たっぷり塗ることが必要な薬も、少量ずつ出して出来るだけ薄くのばして使う方がよい薬もあります。軟膏かクリームかによっても効果や副作用が違ってきます。
指定された回数、使用部位以外に使うことは、避けてください。
症状に合わない薬剤を使用するとかえって症状を悪化させます。特に皮膚病の場合は、その原因菌が何かは検鏡(顕微鏡等で検査すること)しないと専門医でも確定できないことが多いのです。原因菌や症状によって逆効果になる薬もあります。
市販の薬を安易に使うのは感心しません。市販薬を購入する際は、症状にあった薬を選ぶことの出来る薬剤師のいる薬店でよく相談の上、ご購入ください。使用しても症状がよくならない場合や、かえって悪化する場合は、早めに専門医に受診してください。徹底して悪化してから受診すると治るものも治らないことすらあります。
保存法も冷蔵庫に入れた方がよいものと室温においておかなければいけないものがあります。必ず、薬剤師に聞きましょう。薬がその形をしているのは、それぞれ意味があってのことです。むやみと形を変えたりしないようにしましょう。飲みにくかったり、使いにくい場合は、遠慮なく薬剤師にご相談ください。プロの腕前をお見せできると思います(^^)。
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