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許せない生物テロに対抗するために

炭疽菌対策

多発テロの犠牲になられた方々に心よりお悔やみいたします

世界を驚愕させているテロ行動は許されるものではありません。インターネット上ではNIMDA、爆破、ハイジャック。現在生物テロではないかと言われているのが、炭疽菌です。炭疽菌は、手紙などで送りつけられることが可能なため、日本でも注意が呼びかけられています。パニックを起こさないために、炭疽菌を知っておきましょう。

  1. 人から人へはうつらない
  2. 炭疽菌は、皮膚炭疽症・腸炭疽症・肺炭疽症・炭疽菌性髄膜炎の4種類の感染症があり、肺炭疽症と炭疽菌髄膜炎が一番怖い
  3. 発症後すぐ、抗菌剤の大量投与によって治療することができる。しかし、安易な抗生物質の投与は危険である 
  4. 初期症状がインフルエンザや風邪の症状に似ているので早めの診断が必要
  5. 炭疽菌の確定診断は、簡単にできる。
  6. 不審な手紙を受け取ったら
  7. 炭疽症は第4類感染症なので、7日以内に保健所へ届ける

炭疽菌はグラム陽性芽胞形成桿菌(バクテリア)で、
 Edema Factor(EF)
 Lethal Factor(LF)
 Protective Antigen(PA)
の3種の毒素をだします。EFは浮腫を引き起こし、LFは不明のメカニズムで死亡させ、PAはトキシン共同でさまざまな症状を引き起こします。

炭疽菌は、自然界では土壌で増殖します。空気に触れると芽胞に包まれていて、数十年冬眠状態で生き続けます。
この芽胞は、湿気と栄養と37度前後の温度の3要素がそろうと壊れ、炭疽菌が増殖します。

4類感染病で、医療機関は、患者が出たら、保健所に7日以内に報告する義務があります。パキスタン・イラク近隣は毎年炭疽菌による患者が出て、ベルト地帯と呼ばれています。
潜伏期間は、1日~7日ですが、菌を持っている間は、いつでも感染する可能性があります。

紫外線・酸に強いのですが、熱・化学物質に弱いので、ヨード液(うがい薬のイソジン・ポピドンヨード液など)・塩素系漂白剤に弱く、除菌することが可能です。
わずか3つの菌があっても、検査によって発見することができます。
早期治療によって、回復することが可能です。

炭疽菌は3種類の毒素を出します。

表1(炭疽菌)

 
皮膚炭疽病
肺炭疽病
腸炭疽病
炭疽菌性髄膜炎
初期症状 にきび様・虫刺され様膨らみから水ぶくれ インフルエンザ様症状 食中毒様の吐き気・疲労・食欲不振・発熱など口咽頭炎 溶血性髄膜炎
特徴的病変 無痛性で非化膿性の悪性膿疱・黒変
治療すると、10日程度で治癒
頭痛・筋肉痛・悪寒・発熱・胸部軽度痛み発・突然の呼吸困難・チアノーゼ・昏睡を伴う失見当識 ひどい腹痛・吐血・血便・・下痢・腹水の貯留嚥下障害・発熱・首のリンパ節炎 意識消失
感染経路 感染動物や骨・毛皮・皮革との接触・昆虫の咬傷 芽胞による空気感染  口からの経口感染 感染経路はほとんどない 
検査所見 皮膚炭疽 縦隔リンパ節の肥大
(肺炭疽)
  髄膜炎
死亡率 30% 90% (24時間以内)   100%

皮膚炭疽症

初期症状は虫刺されに似ています。感染後2、3日で紫または赤く小さく腫れ、3,4日で水泡ができ、5から7日で潰瘍ができ中心がつぶれて、炭のような黒いかさぶたができます。二次感染がなければ、痛みはありません。治療をすれば、20日ほどで完治しますが、放っておくと、リンパ節を通って、全身に罹患して、死亡する事もあります。必ず、皮膚科に受診しましょう。

腸炭疽症

下痢と腹痛を起こします。食中毒のような症状です。症状は腸型と口咽頭型に分かれます。腸型では、悪心、嘔吐、熱、腹痛、嘔吐、血便、腹水の貯留などの症状がありますがすぐ治療しないと、外毒素によるショックや敗血症になり市にいたることもあります。口咽頭型は、のどの乾き、嚥下障害、熱、首リンパ節の腫れなどの症状がありますが、敗血症への移行がしやすく、こちらもすぐの治療が必要です

肺炭疽症

炭疽菌による被害でもっとも怖いのは肺炭疽症です。症状が出てから、2日で死亡率90%と高く、緊急の治療を要するからです。しかし、鼻毛や気管支繊毛に引っかからずに、炭疽菌が肺へ吸入されるためには、その大きさが1~2μmと大変細かい粒子でなければなりません。普通の培養をすると炭疽菌はすぐ連鎖(つながる)をおこし大きな菌になってしまいます。肺まで到達させる小ささにするには、かなりの科学的技術が必要です。
季節的に風邪が流行りだしています。インフルエンザ菌は、数年毎に変異をしていて、そのために新しく変異したインフルエンザへの免疫ができていないために、数年毎に流行を見ます。昨年はインフルエンザがあまり流行りませんでしたので、今年はインフルエンザが流行する可能性があります。肺炭疽症は、初期症状がインフルエンザによく似ています。例年は、インフルエンザにかかってもお医者さんにかかるのが遅くなる方も、今年は早めにかかりましょう。医学的にレントゲンを撮ると、縦隔リンパ節の肥大やインフルエンザも肺炭疽症も、症状が出て2日以内が治るかどうかの勝負です。2日~3日を越すと、どちらも薬が効きません。

激しい咳と高熱が出たら、すぐに受診しましょう。

炭疽菌に使用される薬

ペニシリン-GEの大量投与が第一選択肢です。代用品としては、エリスロマイシン・<ドキシサイクリン・>シプロフロキサシンなどが挙げられますが、たいていの抗生物質が効きます。
アミノグリコシド・マイクロライド・キノロン・テトラサイクリン・ニューキノロン系抗生物質・クロラムフェニコールも充分効きます。日本は抗生物質開発に置いては世界有数の国ですので、十分な治療薬の備蓄があります。
生物テロの場合はエリスロマイシン、ペニシリンや耐性菌をばら撒かれる可能性がある、ために、アメリカでは<ドキシサイクリンや>シプロフロキサシンがクローズアップされています。ネット販売では不安定な薬剤や、シプロフロキサシンや、時にはまったく違う薬が、送られることもあり、決して安易に購入しないで下さい。副作用も強く、炭疽菌の確定がされる前に抗生物質を飲むと、炭疽菌が見つけられなくなることもありますので、安易に抗生物質を使うのはやめていただきたいです。
日本では、ワクチンは販売していません。アメリカ・イギリスでは死菌ワクチンを使用しています。
日本医師会では医療者に向けて炭疽菌への対応情報を流しています。必ず、<早めに>医師に受診して炭疽菌の確定をしてもらってください。
<!現在アメリカでもっとも使用されている薬はドキシサイクリン(ビブラマイシン)です>

不審な手紙を受け取ったら 
(米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC)による健康に関する勧告より)
http://www.bt.cdc.gov
  1. パニックにならない
    ・ 適切な抗生物質による早期治療によって、炭疽菌の芽胞に曝された後でも発症を防げる
    ・ 人から人へ伝染することはない 
    ・ 疑わしい封筒または小包を振ったり、中身を空けてはいけない
  2. すぐ手袋をしてビニール袋などに、中身が飛び散らないように入れる
  3. うがい薬でうがい・石鹸で手洗いをすぐする
  4. 換気扇・扇風機などのスイッチを切る
  5. 手紙のあった部屋はカギをかけるなどして誰も入れないようにする
  6. もしこぼれたら、直ちに新聞でも衣服でも良いので何かかぶせる
  7. できるだけ早く石鹸と水でシャワーを浴びる
    漂白剤や殺菌剤を皮膚に使わない
  8. 警察・保健所に届ける

連絡場所

各保健所・国立感染症研究所感染症情報センター 感染症対策計画室
TEL:03-5285-1111
FAX:06-5285-1150
Web:http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

役立つホームページ等

感染症の診断、治療ガイドライン 日本医師会雑誌臨時増刊号第122巻
IDWR 感染症の話

炭疽菌等の汚染のおそれのある郵便物等の取扱いについて(検査を含めた対応の流れ)
(平成13年10月18日科発第467号等通知)

炭疽に関する意見書(社団法人 日本感染症学会)について

「米国の同時多発テロ」における炭疽菌等の汚染のおそれのある封筒等の取扱い方法について
(厚労省「米国の同時多発テロ関係」ホームページより)

バイオテロリズムの脅威-生物兵器(炭疽菌)によるテロリズム-

炭疽が疑われる患者の診療のポイント


Attention!!

狂牛病とくすり  2001.11
イギリスで人に感染してヨーロッパを恐怖に落とした狂牛病が日本にも入ってきました。食肉業界では死活問題になっており、スーパーでは牛肉が売れない状態が続いています。プリオンの突然変異によっておこる脳症で、人に発症すると痴ほう様症状や四肢の痺れなどが起こります。
医薬品の形成にかかわっている部分や有効成分・化粧品の基剤などにも牛等由来物を原料としたものが多々あります。医薬品や市販薬・化粧品の狂牛病対策はどうなっているのでしょうか

【医薬品】

厚生省(現厚生労働省)は平成8年3月からウシ由来物に関する調査とその取り扱いについての詳細報告及び認可をしてきました。初めはイギリス産に限ってチェックしていたのですが、狂牛病(ウシ伝達性海綿状脳症=BSE)の発生している国とリスクの高い国原産のウシについては特に厳重に使用禁止を含めチェックしています。また使用部位も脳・脊髄・眼・腸・扁桃・リンパ節・脾臓・松果体・硬膜・胎盤・脳脊髄液・下垂体・胸腺または副腎を使用することが認められないとしています。

さらに国内でBSEが発生したことを受けて、日本産のウシについても同様な処置を取り、現在商品の回収に入っています。予防的安全処置としての回収です。特に基剤として使われているラノリン・ゼラチン(英国以外)・乳(英国以外)あるいはアミノ酸・脂肪酸及びその誘導体・グリセリン等の高度精製原料は、安全性が高いため対象外とされています。行政・メーカーの対応が数年前からなされており、今回もすばやい対応がされていますので、医療機関・薬局からもらわれるお薬は、安全です。安心してお使いください。

【一般薬・健康食品】

医薬品のような規制がありませんので、現在かなりの回収品が出ていますがまだ調査審査中です。成分表示がすべてされてなかったり、原料に使っていたりします。薬店・薬局でお尋ねください。(ただし全部は把握できていない場合もあります)

【化粧品】

基剤にウシ由来物を使っているものが大半です。そのため回収に入っているものが多々あります。皮膚からの吸収はないと思われますが、購入時に必ず問い合わせるなどしてご注意ください。回収終了後に出た商品については、安全であるといえるでしょう。冷静な対処が大切です。


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