兵庫区薬剤師会ホームページ・トピックス No.18

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生活習慣病シリーズ(2)
高脂血症治療薬
HMG-CoA還元酵素阻害薬
冠動脈疾患の3大危険因子は、高脂血症、高血圧そして喫煙といわれています。高脂血症の中でも高コレステロール血症が動脈硬化症の最大の危険因子といわれています。
高コレステロール血症は、血清コレステロールが高い状態です。特徴的な自覚症状がないために認識しにくく、高脂血症によって「二次的に併発される病気が怖い」病気の一つです。

== コレステロールには悪玉と善玉がいる? ==

血液中にある脂質(あぶら)には、コレステロール・トリグリセリド・リン脂質などがあります。
これらの血清脂質は、アポタンパクと球状の複合体を形成しています。
 
リポタンパクはその大きさと比重によって4つに大別されます。

  1. カイロミクロン
  2. 超低比重リポタンバク(VLDL) 
  3. 低比重リポタンパク(LDL)
  4. 高比重リポタンパク(HDL)

生体内のコレステロールは、食事から吸収される分と、自ら生合成される分があります。主に肝臓で合成され、VLDLに組み込まれて血液中に分泌されます。
VLDLは、酵素によってトリグリセリドが分解され、コレステロール豊富なLDLに変化します。
LDLは末梢組織にコレステロールを供給します。
HDLは逆に末梢組織からコレステロールを取り込んで、胆汁酸として体外に排泄する役目をしています。
余分なLDLは、肝細胞表面のLDL受容体によって、再び肝細胞内に取り込まれます。過剰なLDLは酸化変性すると血管壁にへばりつき、粥状動脈硬化を起こすこともあります。
この粥状動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞などをおこします。そのため、LDLは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、コレステロール排泄に関与するHDLを「善玉コレステロール」と呼ばれています。
善悪に分かれていますが、どちらのコレステロールも必要不可欠ですが、その量がコントロールされている必要があります。

                  アセテート
                    l  ← HMG-CoA還元酵素↓
                     l 7α-ヒドロキシラーゼ
            LDL受容体 ↓
LDLコレステロール ――→コレステロール ――→ 胆汁酸 ――→ 糞便中へ
                                 ↑
                             VLDLコレステロール

平成12年度日本動脈硬化学会で高脂血症ガイドラインが出されました。
コレステロールは、低い方がよいと思っておられる方がいますが、HDLは低すぎるのは好ましくありません。
高脂血症ガイドラインでは、いままで総コレステロール値220/dl以上を治療開始基準値としていましたが、240/dl以上と基準値を上げました。
むしろ、低くなりすぎると免疫機能が低下して、免疫不全によって起こるがんなどの死亡率が上がっている報告がアメリカでされました。
また、他の危険因子があるかないかによっても、治療開始基準値が違います。

(表1) 冠動脈疾患の予防・治療観点から見た
日本人の高コレステロール血症患者の管理(適応)基準

カテゴリー
生活指導・食事療法
薬物療法
治療目標値
LDL-C
TC
LDL-C
TC
LDL-C
TC
A 冠動脈疾患(―)
他の危険因子(-)
140mg/dl
以上
220mg/dl
以上
160mg/dl
以上
240mg/dl
以上
140mg/dl
以上
220mg/dl
以上
B 冠動脈疾患(-)
他の危険因子(+)
120mg/dl
以上
200mg/dl
以上
140mg/dl
以上
220/dl
以上
140mg/dl
以上
200mg/dl
以上
C 冠動脈疾患(+) 100mg/dl
以上
180mg/dl
以上
140mg/dl
以上
200mg/dl
以上
100mg/dl
以上
180mg/dl
以上


高脂血症の治療

高脂血症の治療目的は、血液(血清)中のコレステロールを低下させることです。しかし、善玉コレステロール=HDLは、低下するとコレステロールの排泄が出来なくなりますから、40/dl以上をキープします。
治療目標は、上記表1に示しました。

【高脂血症Aの治療】

管理基準値を超えると、高脂血症治療をはじめるわけですが、薬物療法を開始する前にまずトライしていただくことがあります。
*ライフスタイルの改善、特に過食・飲酒などの食事性因子の見直し
*運動不足の解消
*肥満・糖尿病・高血圧などの疾患の合併がある場合はこれらを治療する

【】閉経後の女性:高脂血症(特に高コレステロール血症)の増加、動脈硬化の進展が加速されます。 
 速やかに食事療法を行い、場合によっては高脂血症治療薬を投与します。
【】若年者や妊娠可能性のある女性:食事療法が中心。必要に応じて胆汁酸吸着薬使用します。
 薬の投与は慎重にします。
【】高齢者:代謝活性の低下・腎機能の低下がある場合が多いので、投与量には注意します。
 クロフィブラート系は腎臓で排泄されますので、要注意。特に副作用に注意します。

表2) 薬物療法の目安

高コレステロール血症単独 HMG-CoA還元酵素阻害剤
プロブコール・胆汁酸吸着薬
高トリグリセリド血症単独 クロフィブラート系・ニコチン酸誘導体・EPA
高コレステロール血症兼
高トリグリセリド血症
クロフィブラート系・ニコチン酸誘導体
併用療法:HMG-CoA還元酵素阻害剤
低HDLコレステロール血症 ニコチン酸製剤・クロフィブラート系・スタチン

高レムナント血症がある場合はクロフィブラート系を優先する。


【高脂血症Bの治療】

コレステロールを下げるということがどういうことなのかを考える事が大切です。
治療目的が動脈硬化の予防・治療にあるとすると、危険因子を積極的に治療あるいは、対策を立てることが大事なのです。個人の家族歴や病歴等状況によって、目標値を設定する事が大事です。

 動脈硬化の危険因子

  1. 高LDLコレステロール血症
  2. 年齢:男性≧45歳 女性≧55歳または早期閉経でエストロゲン補充療法を受けていない人
  3. 家族に早発性冠動脈疾患になった者がある人
  4. 喫煙
  5. 高脂血症
  6. 低HDLコレステロール血症(<35mg/dl)
  7. 糖尿病

  * 高LDLコレステロール血症(≧60mg/dl)は危険を減らす因子です *

【高脂血症Cの治療】

どの部類の高脂血症なのか・家族に高脂血症の人がいるのか・基礎疾患はなにかをはっきりさせ、ライフスタイルや危険因子を十分に考慮します。
食事療法・運動療法が一番の治療です。禁煙する事は言うまでもありません。安易な薬物療法は避けますが、食事療法等を3~6ヶ月続けても効果が出にくい場合は薬物療法に移行します。
しかし薬がすべてを解決するわけではなく、食事療法・運動療法・ライフスタイルの見直し・禁煙等に努力してください。
治療は長期に継続するものです。飲み方が守り易い事、安全性と効果のバランスをみながら薬剤が選ばれます。

高脂血症治療薬の話題

最近海外で副作用(横紋筋融解症)による死亡例が出たため、自主回収・製造中止になった薬「セリバスタチン」(商品名「セルタ」「バイコール」)は、HMG-CoA還元酵素阻害剤の部類に入ります。日本では、海外より低用量で使用しているため、死亡例は出ていません。
HMG-CoA還元酵素阻害剤はステロイド合成抑制の影響もなく、長期安全性もあり、予防効果もある有効な薬ですが、セリバスタチンの場合、副作用による障害が、あまりに大きいための自主回収と思われます。腎排泄されますので、腎機能障害のある方は特に副作用に注意が必要です。
今まで服用されていた方は、服用を中止すると副作用が新たに出る心配はありません。

表3) 高脂血症治療薬一覧

分類
一般名
商品名
一日量
重症限度
投与
回数
作用場所










HMGlCoA還元酵素阻害剤 ブラバスタチンNa メバロチン 10mg 20mg 1~2 肝臓・合成阻害
シンバスタチン リポバス 5mg 10mg 1  
フルバスタチンNa ローコール 20~30mg 60mg 1 肝臓・合成阻害+抗酸化作用
陰イオン交換樹脂 コレスチラミン クエストラン 8~12mg   2~3 胆汁酸・胆汁酸の排泄
プロブコール プロブコール ロレルコ 500mg 家族性高脂血症 2 胆汁酸・胆汁酸合成促進
シンレスタール   1000mg    



植物ステロール ソイステロール モリステロール 1200mg   3 消化管・吸収抑制+多少合成抑制や異化促進
γオリザノール ハイゼット 300mg   3  
その他 メリナミド アルテス 1500~2200mg   3 腸管・分解













クロフィブラート系 クロフィブラート アモトリール 750~1500mg   2~3 肝臓・コレステロール&TC合成抑制+TC分解酵素(LPL)活性化
クリフィブラート リポクリン 600mg   3  
シンフィブラート コレソルビン 750~1500mg   3  
クロフィブラートAl アルフィブレート 1500mg   3  
ベザフィブラート ベザトールSR 400mg   2  
ニコチン酸系 ニセリトロール ペリシット 750mg   3 脂肪分解抑制
ニコモール コレキサミン 600~1200mg   3  
ニコチン酸トコフェロール ユベラNニコチネート 300~600mg   3  



その他 ポリエンホスファチジルコリン EPL 1500mg   3 細胞内・脂質代謝改善
  デキストラン硫酸Na MDS 450~900mg   3~4 中性脂肪分解酵素活性化
  パンテチン パントシン 600mg   3 コレステロール異化排泄促進
  イコサペント酸エチル エパデール 1800mg TC異常2700mg 3 肝臓・VLDL合成・分解促進
その他 エラスターゼ エラスチーム 5400ELU 10800ELU 3 肝臓・コレステロール異化&排泄促進

表4) 主な副作用と特徴

分類
注意する副作用等
消化器
血管系他
皮膚
障害
HMGlCoA還元酵素阻害剤 横紋筋融解症(腎機能障害のある人は注意) 胃腸障害 頭痛 皮膚
湿疹
夜間にコレステロール合成されるので1日1回夕食後または寝る前に服用
倦怠感
陰イオン交換樹脂 ビタミンA/D/E/K吸収不全 便秘・腹部膨満感・食欲不振    
多剤を吸着する(併用はしない)
水に溶かして服用
プロブコール 肝酵素上昇 胃腸障害 QT延長(定期的な心電図検査必要)  
CPK上昇
消化管からの吸収悪い
抗不整脈薬との併用注意
植物ステロール 食事療法で改善できる人のみ 胃部不快感    
アルテス 授乳中は避ける 軟便・食欲不振 頭痛・めまい   
クロフィブラート系 腰部・下肢筋肉の痙攣・脱力感 腹痛・下痢・悪心    
CPK上昇
糖尿病薬・抗凝固薬の作用強化
胆石症(胆石が出来やすい)
ニコチン酸系 糖尿病の耐糖能悪化 胃腸障害   紅潮・掻痒感・発疹
EPL   下痢・腹部不快感    
MDS 急速にトリグリセライド低下 食欲不振 出血・のぼせ・熱感  
パントシン 便秘・血液疾患治療薬でもある 下痢・食欲不振    
エパデール 空腹時吸収が悪くなる   出血  発疹
エラスチーム 食前服用が効果良い 下痢・胃部不快感    

高脂血症は一度薬物療法に入ると、薬を飲みつづけなければならないことが多い疾患です。生活習慣病といわれるぐらい、日常の生活習慣が重要なポイントです。
また高脂血症によって併発される病気は、厄介なものが多くあります。
家族に高脂血症既往歴のある方や高脂血症の危険因子をお持ちの方は特に、日頃からの注意が必要です。バランスの取れた食事・適度な運動を心がけてください。
役立つコレステロールと仲良く・悪さをするコレステロールをやっつけましょう!


Attention!!

処方せんにも有効期限があります

医院や病院からもらう処方せんには、有効期限があります。
処方せんの上の方にあなたの生年月日の書かれた左あたりに有効期限が書いてあります。
特に指定した月日が書い場合は、処方せん発効日を含めて4日以内です。何らかの事情があって4日以上後にお薬を必要とする場合は、有効期限が書いてあります。
有効期限を過ぎた処方せんでは、申し訳ないのですが、お薬をお出しすることが出来ません。
医師は、処方せん発行された時の症状にもっとも有効な薬を処方します。病気の症状は、4日以内に変化する事が多く、適切な処方でなくなっている事があるからです。
有効期限内に必ず、薬局にお持ちください。


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